COLORS OF SIGH
1.My Reverie
2.It Never Entered My Mind
3.You've Changed 
4.All Of You
5.Estate
6.Depois Dos Temporais
7.Little Butterfly <Pannonica>
8.Love For Sale
9.Confirmation
10.Oceano
11.Valencia 〜 Spain
12.こころ
No : BJCD-0025 BAJ Records
Price : \2,625(税抜価格\2,500)
Release : 2005/07/20
Recorded at VICTOR Studio 301, February 4, 2005 & ONKIO HAUS Studio 1, February 16, 2005
上杉亜希子 (vo)
ぶちでございます。ちょっと声が(?)肥えた感じです。(笑)
佐藤允彦 (p,synth,celesta)
コーラスも担当してます。高音パートです。
加藤 真一 (b) 同じくコーラスも担当。ベースパート?
岡部 洋一 (perc) プリン王子。もちろん、王子もコーラスしてます!
村上 寛 (ds) おちゃめで無邪気な寛さん。ピアスも似合う色男!
マツモニカ (harmonica) マツモニカが入ったおかげでとってもいい色になりました。
峰 厚介 (ts)
かっこいい変なおじさんです。

このアルバムのいろいろ
和田 誠
上杉亜希子のアルバム第二弾である。
 彼女は浜松の生まれ育ち。卓球好きの女の子だった。短大英語科在学中に音楽に興味を持ち、アマチュアバンドのヴォーカル担当となる。その頃は日本のポップスを歌っていたが、23歳の時にカーメン・マクレエを聴き、ジャズに憧れる。
 ヤマハ主催のハママツ・ジャズ・ウィークで、講師佐藤允彦のセミナーに参加してジャズを勉強。自動車会社に勤めて図面を描く仕事をしていたが退職して上京。佐藤允彦を訪ねて押しかけ弟子となる。以後、上杉は佐藤を「師匠」と呼ぶ。ついでに言うと、師匠は上杉を「ブチ」と呼ぶ。第一印象が犬のようであったかららしい。
 上杉曰く。「師匠は歌い方だけでなくジャズ全般を教えてくれるので嬉しい」ファーストアルバムでもこのアルバムでも上杉はブラジルの曲を取り上げている。彼女がブラジル音楽に興味を持ったのは友人の青木美和(イラストレータ ー。上杉のアルバムのジャケットに水彩画を提供している)の影響だという。
 師匠に「ブラジルの歌を歌いたい」と言うと師匠は「歌うならポルトガル語を勉強すること」と釘を刺した。すると彼女はブラジル銀行にアポなしでとび込み、日系三世の行員に指導を仰いだ。
 「Love For Saleにはいいヴァースがついてるよ」とぼくが言ったことがある。彼女はすぐに調べ、レコーディングではヴァースから歌った。
 これらの例からもわかるように、彼女は好奇心旺盛であり、勉強家であり、頑張り屋さんである。度胸もいい。それだけを記すと強烈な女性のような印象を 与えてしまうかもしれないが、人柄は穏やかで明るく、ニックネームの「ブチ」をあっさりと受け入れるユーモアの精神も持ち合わせている。
 このアルバムには、そういった彼女の長所がたっぷり入っていて、充分に楽しむことができるのだ。
 なお、佐藤允彦のアレンジとピアノ、参加した一流ミュージシャンの共演が素晴らしいのは言うまでもない。
1.My Reverie
スウィング・ジャズ全盛の1938年にラリイ・クリントン・オーケストラの演奏、専属歌手のビー・ウェインの歌でヒット、続いてビング・クロスビイがレコーディングして評判をとった曲。もとはドビュッシーが1890年に作曲したピアノ小品“Reverie(夢想)”で、これにラリイ・クリントンが英詩をつけ、自分のオーケストラ用にアレンジしたものである。
2.It Never Entered My Mind
作曲リチャード・ロジャース、作詞ロレンツ・ハートの名コンビが、1940年のミュージカル『ハイヤー・アンド・ハイヤー』のために作った曲。舞台で はシャーリイ・ロスが歌い、その後多くのジャズ・シンガーに好まれるスタンダード・ナンバーとなった。
3.You've Changed
1942年に発表されたビル・ケアリイ作詞、カール・フィッシャー作曲の歌。ハリイ・ジェイムズ・オーケストラ、ディック・ヘイムズの歌唱でヒットしたが、今ではビリイ・ホリデイの歌唱がより知られているだろう。イーディ・ゴーメ、カーメン・マクレエなど多くの歌手に歌われている。
4.All Of You
1955年のミュージカル『絹の靴下』のためにコール・ポーターが作詞作曲。舞台ではドン・アメチが歌った。『絹の靴下』はコチコチの共産党女性ニノチカが、パリでアメリカの映画プロデューサーと恋をする物語。原作はメルキオール・レンジェルの舞台劇『ニノチカ』で、グレタ・ガルボ主演で映画化されている。ミュージカルの方も映画になり、ドン・アメチの役はフレッド・アステアが演じた。
5.Estate
エステートを読むと英語の不動産になってしまうが、この場合はエスタテと読まなくてはいけない。イタリア語の「夏」である。1960年にイタリアのシンガー・ソングライター、ブルーノ・マルティノがブルーノ・ブリゲッティと共作。発表当時はそれほどのヒットにはならなかったが、のちにジョアン・ジルベルトがボサノヴァで演奏して、ジャズ・ミュージシャンたちに知られるようになった。英詞はジョエル・エドモンド・シーゲル。
6.Depois Dos Temporais
イバン・リンスが1983年に作詞作曲した歌。英題はBeyond the Storm、つまり「嵐を超えて」。リンスが離婚し、次の恋人ができた時に作った曲だそうである。「嵐のあとはきれいな空と青い海がひろがる」といった内容。
7.Little Butterfly <Pannonica>
原曲はセロニアス・モンクの"Pannonica"である。これにジョン・ヘンドリックス(ランバート・ヘンドリックス・アンド・ロスの三人組で活動していたこともある歌手兼作詞家)が歌詞をつけ、カーメン・マクレエが歌った。
8.Love For Sale
コール・ポーター作詞作曲の1930年のミュージカル『ニューヨーカーズ』の中の曲。舞台ではキャスリン・クロフォードが中心となって歌った。現在は歌われることの少ないヴァースから上杉は歌い、その部分を説明する効果音が加えられた。因みにこれは娼婦の歌である。
9.Confirmation
チャーリー・パーカー、1946年の曲。上杉は富樫雅彦&J.J.SPIRITSの演奏が好きで、そのアルバムの中の峰厚介によるソロをスキャットにして歌う。さらに峰厚介をゲストに迎えて演奏してもらった。
10.Oceano
ジャバンの1989年の曲。ブラジルのライブで彼が歌うと会場が大合唱になってしまうほど、ブラジルではポピュラーである。「君が川、僕は海、川が海に水を注ぐように再び僕に愛を注いでくれたら、今感じている痛みを忘れることができるのに」という内容。
11.Valencia 〜 Spain
『ヴァレンシア』は富樫雅彦の曲。『スペイン』はチック・コリア作。1972年のアルバム「Light as a Feather」で発表された。作詞はアル・ジャロウが1980年に手がけた。『スペイン』にはイントロとしてホアキン・ロドリーゴの『アラン
フエス協奏曲』の一部がついている。全体にスペイン色に彩られたナンバーとなった。
12.こころ
萩原朔太郎の詩(詩集「純情小曲集」より「愛憐詩編」)に佐藤允彦が曲をつけた。2003年NHK前橋放送局のクリスマス・イヴェントのために作られ、ソプラノの尾高かおるが歌ったのが初演である。

Colors Of Sigh